●エッセイ8
料理の話

●その1...バリ料理の話

バリ人が日常ふつうに食べている料理は、実はバリ料理ではありません。そのほとんどがインドネシア料理なのです。ナシゴレン、ナシチャンプール、サテ、ガドガド、チャプチャイ、ミゴレン、ミクア、ペペス・イカン...どれもインドネシア全域で食べられているもので、バリだけのものじゃありません。それじゃあバリ特有の料理とはどんなものかというと、代表的なものは豚肉を使った料理でしょう。なぜなら、インドネシアのほとんどの人がイスラム教なので豚を食べないけれど、バリは90%以上がバリヒンドゥなので豚肉を食べる。ということで、必然的にバリ料理イコール豚肉料理ということになるわけです。エッセイ4で、バリ人の日常食、ばりごはんはナシチャンプールだと書きました。とうぜんインドネシアを代表する料理なのですが、このお皿に載ってるおかずが豚肉料理になると、もうそれだけでバリ料理になってしまうし、サテという串焼き料理も豚肉のサテサピになったりするとそれはもうバリ料理になってしまうのです。もちろん他にも豚肉を食べる民族もいるので、正確に言うとバリだけとは言えないかも知れません。他にバリ人が好きなものには、山羊の肉があります。道ばたで焼いている屋台の肉をよく見てください。サテアヤム(鶏肉)も多いのですが、おなじくらいサテカンビン(山羊)も多いのです。それから亀の肉も好きですよね。そうそう、実は彼ら犬の肉も好きなのです。彼らははずかしそうに聞いてきました。「日本人は犬の肉を食べないの?」って。「え?食べないよ。バリ人は食べるの」「うん、時々」「好きなの?」「うん、好きだよ」。友達になったバリ人があなたをもてなしてくれた料理が、犬の肉だったりするかも知れません。バリのサテは、ミンチされていることが多いので、何肉かわかりにくいのでご注意を。

●その2...
インドネシア料理の話

インドネシア料理って、どんな料理?って良く聞かれます。これもまた難しい。マレーシア料理と中華料理、西洋料理がそれぞれ入ってきて、時には混ざり合ってできあがっているようです。串焼きのサテも、焼きめしのナシゴレンもマレーシアにあります。チャプチャイは中華料理の八宝菜ですし、ミー・ゴレンは焼きそば。カレーは隣の島から影響を受けたジャワ風です。地元の人は食べないけれど、外国人がレストランで食べるロブスターやスペアリブはオーストラリア料理になるのでしょうか。まあどれもどこかの国の料理の焼き直しです。まあ中華料理の影響はアジアなら少なからず影響を受けるし、オーストラリアに近いことやオランダに占領されていた時代のあることを考えれば、西洋料理の影響を受けるのも当然でしょう。よく日本で紹介されるナシゴレンなどを、他のナシゴレンと区別するために、インドネシア風ナシゴレン...なんていう言い方をされることがあります。それじゃあ何がインドネシア風かと言いますと、たぶん調味料の違いだと思います。とくにインドネシアの調味料の王様と言えばサンバルです。これは赤唐辛子を中心に、いくつかのスパイスをすりつぶしたもので、どこのレストランにも家庭にもあります。インドネシア料理の味はコレで決まると言えるでしょう。韓国のキムチのように各家庭で味が違うほどで、これが家庭の味、つまり料理の決め手になるようです。他にはエビをすりつぶして発酵させたもの、日本の醤油に似たケチャップ・アシン、甘いソースのケチャップ・マニスが定番です。ですから、おなじナシゴレンでもそれぞれの店で調味料が違っています。たいていサンバルたっぷりの辛くて赤いチキンライス系、ケチャップ・マニスを使った甘いソースがけごはん系、醤油味のケチャップ・アシンを使ったチャーハン系に分かれますが、おいしいナシゴレンは、やはりそれぞれの調味料がうまく混ざり合っていて、それぞれの調味料を感じさせません。

●その3...
オーストラリア料理の話

ベジマイトってご存じでしたか?僕はオーストラリアに行ったことがなかったので、バリのレストランで知ったのですが、発酵した野菜のペースト...あちらのチーズというか、味噌のようなものです。オーストラリア人はこれをパンに塗って子供の頃から食べているそうで、オーストラリア人の旅行客が多いバリでは、レストランやワルンに置いてあることが多いようです。パンにトマトやチーズや卵などを挟んでトーストするジャッフルというオージーが大好きな食べ物がありますが、ボクはそれに塗ったものを食べました。これをオージーたちはスナックのような感覚でよくおやつにたべるそうですが、バリのロスメンやワルンでは朝食やランチメニューにあります。おいしいものではありません。どちらかというと馴れるとクセになるといった類のものです。ボクの友人のバリ人もよく食べています。結構油をたっぷり塗った専用のハサミみたいなものに挟んで焼くので、油っぽいのが難点。しかし所詮ホットサンドなのに、うまく焼いたお店のジャッフルはホットサンドよりおいしいのはなぜでしょう。

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